『ラストマイル』感想

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「物語」と「構造」で作品自体の話を、「物語とわたし」、「構造とわたし」、「鑑賞体験」で作品とわたしの距離感の話をしています。

物語

 お仕事ドラマだった。デイリーファーストの事件という“大きな物語”と、佐野親子・母子家庭(松本家)の“小さな物語”にざっくり分かれていたが、“大きな物語”であるところの事件の詳細は敢えてぼかされていたり、重要なシーンや台詞は説明的ではなかった。真犯人の筧まりかの情報も真犯人(事件のキーパーソン)であるにも関わらず極端に少ない。“小さな物語”であるところの佐野親子・松本家の物語は伊坂幸太郎的伏線回収がされていてスッキリした形だったが、その主軸は「自分の仕事に誇りを持つこと」にあり、全然共感できなかった。

構造

 時系列トリック含めどこで始まってどこで終わるのか分からない映画だった。〈現在起こってる事件〉から〈5年前の事件〉に飛んだり、〈真犯人〉から〈最初の被害者〉に飛んだり、梨本孔がロッカーを見つめるシーンでループしたり。それらが「2.7m/s→(70kg)0」の「0」なのかもしれない。
 『ラストマイル』が映画の中でストライキという選択肢を提示したことは現実に生きる人々への意識があればこそだと思った。

物語とわたし

 『ラストマイル』をお仕事ドラマだと受け取ったので、この映画にわたしはいないなと思った。わたしはこの映画の画面の端に映るモブですらない、と思った。「わたしのための物語ではない」という理由で映画自体の評価が下がることはないし『ラストマイル』はフツーに爆オモロ映画だった。しかし、少なくともわたしのための物語ではなかった。

構造とわたし

 この映画の目的は観た人に考えさせることにあるのだと思う。筧まりかが死ぬ瞬間は丁寧に撮られているが、筧まりか自身のパーソナルな部分についてはまったく説明されていない。梨本孔がロッカーを見詰めるシーンは映画をループさせる重要なシーンだが、それがなぜ重要なのかは説明されない。舟渡エレナの「爆弾はまだある」は〈12個あるはずの爆弾はまだ11個しか見つかってない〉という意味にも捉えられるし、〈山崎祐や筧まりかに象徴されるような“爆弾”は、デイリーファースト社が労働環境の改善を行わない限りまだある〉という意味にも捉えられる。
 『アンナチュラル』も『MIU404』も「考えろ」というテーマは通底していたし、『ラストマイル』も「考えて」ほしいんだと思う。その上で言うけど、やはりわたしのための物語ではなかった。わたしはもう既に知っているし、考えている。が、この映画には登場しなかった。それはわたしが…………【ここから先は有料コンテンツになります。】

鑑賞体験

 映画館全然行かな人なので障害者割引があることを初めて知った。多分割引対象になるし配偶者も割り引かれると思う。ユナイテッド・シネマが映画の日割引をしていて一律1,000円だったので使わなかったけど。これって外部疾患向けなのでは?内部疾患のやつが使ってええんか??と疑っていたが、映画を見終わった後はどうでもよくなった。別に隣の席に座ってるやつが何円でその席に座ってようがどうでもいいから……。
 体調的にもタイミングがよかったし、何も知らずに行ったがブラックフライデーの入場者特典が貰えたのも棚ぼた的にタイミングがよかった。封を開けたらMIU404が飛び出してきたのはびっくりした。
 映画館で映画を観るの、所要時間に比べて肉体は動かさないので案外元気だという発見があってよかった。映画を観て疲れるのは主に脳と目で、むしろ映画館を出た後にボーッと歩く方がよいということが分かった。

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